2017年 11月 の投稿一覧

女の執念が蛇になる事

土佐の国(高知県)で猟師をしている男がいた。男は40歳、女房は45、6歳であった。
この女がとても嫉妬深く、男が猟に出る時にいつも付いてきていた。
男はあまりにもしつこいので、ある時猟に出る時その女房が後から付いてきたところを見計らって刺殺した。すると傍らにあった大木の根っこから大きな蛇が出てきて男の首へまとわりついた。
男は仕方なく高野山に参ったら不動坂(※1)の中ほどで蛇が首より離れて草むらの中へ入っていった。
男は嬉しく思って高野に百日ほど滞在して、もう何もないだろうと思いやまを降りていたら不動坂のあたりで草むらから蛇が出てきてまた首にまとわりついた。

男もどうしようもなく、東へ修行へ行こうとすぐに旅立ち大津の浦(※2)に乗合の船に乗ったが沖合より全然後へも先へも進まなくなってしまった。
船頭が言うには「この中に何か訳ありの人がいるのでしょう、一人のせいで何人の人の迷惑になる」と言うので男は仕方なく首に巻いて誤魔化していた綿を取り「これのせいである」と言って蛇を見せ他の方に謝り「早く船を降りろ」と責められた。
もうこれまでだと、その男は湖へ身を投げて死んでしまった。
その時、蛇は首を離れ大津の方へ泳いでいったという。

※1 高野山登り口の坂。その上は女人結界で女は入れない。
※2 琵琶湖南岸にある船着場。大津市

伊賀の化け物の事

慶長(1596~1615)のころ、伊賀の国(三重県北西部地域)で、ある侍の屋敷に不思議な事があった。
夕暮れになると、玄関の前を美しい女が衣を頭から被って歩いてたり、また首がなく胴だけがあるいてたりした。
またある時は昼時分に、台所の屋根から女と大きな坊主が煙だし(※1)から覗く事もあった。
また白い帷子の着物を着た女がきて髪をざんばらにして4~5人連れて踊る事もあった。
こういう事が多くあったのでこの屋敷の人は出て行った。
今はこのような事もないけれど、昔のことを聞き伝わって誰も住まなくなってしまった。

※1 煙を出すための屋根の穴

女の妄念が迷い歩く事

 今の福井県での事である。
ある者が関西地方へ行く為に歩いていたところ、沢谷というところに大きな石塔があった。
その下へ鶏が一匹下りてきた。月夜の日だったがよく見ればその鶏の首は女の首であった。そしてその男を見て不気味に笑った。
男は落ち着いて刀を抜ききってかかったがそのまま道筋を変えて上へ行った。続いて追っていると府中の町の上比志(かみひじ)という所にでて鶏は、ある家の窓から中へ入った。
不思議な事だと思い、その家の中の様子を聞けば女性が旦那を起こし「ああ、不気味なことだった。今、夢の中で沢谷を通っていたが一人の男が私を斬ろうとして刀を持って追ってきてここまで行ったら逃げれるだろうと思ったら夢から覚めました。汗水流しております」など言ってため息をついて語った。
それを聞いていた外の男はこの話を聞き、戸を叩いて「失礼な事とはおもうが、ここを開けて下さい」といって家の中に入り「ただいま追いかけたのは私です。もしかしたら人間ではいらっしゃるが、罪咎を背負ってらっしゃるとは嘆かわしい」と言って出て行った。
女も納得して、京都の真西寺に入り、後世はひたすら祈っていたという。

二恨坊の火

摂津国高槻庄二階堂村(大阪府茨木市二階堂)に火が上った。3月から6~7月頃までいる。大きさ30センチほどあり、家の棟や木の枝鞘にとまる。
近くでみれば目や耳鼻口があり、人の顔のようである。人に悪さをしないので村民は恐れることはなかった。

昔、ここに日光坊という山伏がおり、村長の妻が病に伏しているので日光坊に加持をさせた。その方法が寝室に入って17日祈祷をしたら病が治った。
それなのに村長は「山伏と密通した」と疑いお礼どころか殺してしまった。その恨みが火となってその家の棟に毎夜飛ぶようになり村長を殺した。
「日光坊の火」というのを「二恨坊の火」というようになった。

空中の怪音

ある人が天明6(1786)年6月の初旬より空中より太鼓のような響きが聞こえる。
気のせいかと思っていたが、同月の13日夜中から明け方まで3~4度また音がした。
それはちょうど井戸ケ輪(※1)を叩くような音である。

後に水害のあと、その音は止んだ。

※1 井戸の側壁の土や石が崩れるのを防ぐために周りを囲ったもの