2017年 12月 の投稿一覧

生きていた嫉妬心

大坂の河内に住む裕福な妻が長患いの末に亡くなってしまった。裕福な家らしく盛大な葬儀が行われ本願寺から来た僧たちが一斉に読経した。その夜は亡者の柩の置かれた部屋で僧たちが休んだ。
夜中になると小雨まじりの風が吹き柩が揺れ、仏前の灯が消えてしまった。真っ暗闇の中で何かが動き出す気配があり、眠っていた僧たちの中で一人だけその気配を感じ、恐れていた。

翌朝、家の主が、りんという女中を呼んだがいくら呼んでも返事がない。柩の置かれた部屋に行ってみると僧たちが青ざめていた。棺桶の縄が切れて、蓋がわずかにずれていたのだ。
恐る恐る蓋を開ければ、りんの首がその中にあった。髪の毛を掴む格好で亡者の手に握られている。
主は亡き妻が、若くて美しいりんに尋常ならぬ嫉妬心を抱いていたことを思い出した。

 

[参考文献:新御伽婢子]

狐の恩愛

享和3(1803)年の春、鼠がおびただしく繁殖し、商売の品を食い荒らすことがあった。そこの主人は嫌がり、石見銀山砒藥(殺鼠剤)を用意して餌に混ぜておいた。すると4~5匹の鼠がそのあたりで死んでいた。ごみ捨て場へ遺棄した。

翌日の朝、狐の子がその鼠を食べたのであろう、ごみ捨て場あたりに死んでいた。
ある日、その者の妻が外出した時大事にしていた子供がどこへ行ったのか姿が見えなくなった。妻は悲しんでいたが夫はたいそう怒り「きっと狐の仕業であろう。狐を捕えようとして薬に当たった鼠を捨てたのではない。子狐が勝手に鼠を貪って死んだのに、わしを仇と思い最愛の子供を取るとは無道だ」と近くの稲荷神社に行って道理を説いて怒った。
翌朝、その者の庭先に死んだ子狐の死骸と我が子の亡骸がともに捨てて置かれていた。
そして井戸の中で雌雄の狐が入水していたという。

 

[参考文献:耳嚢]

猫の転生

大坂の北に大運という禅僧がいた。日頃飼っていた猫が寛文10(1670)年9月22日に犬に食い殺されてしまった。
僧は不憫に思い「お前は畜生だから成仏は難しい。獣の中の第一は虎であるから今度は虎に生まれ変われよ」と葬った。

それから13年が経って同月同日の禅僧の夢にその猫が現れ「お示しにより、私は虎に生まれ変わりました」と告げたという。

 

[参考文献:新著聞集]

猫の自殺

大坂の博労の鍛冶屋八兵衛の妻は病気が重くて、とうとう亡くなってしまった。
死期が近づいた頃、長い事飼っていた猫が布団のあたりを離れずにいたが病人が「私はまもなく死ぬ。死んだあと、お前を可愛がってくれる人もおるまい。どこへでも行ったらよい」と言うと猫はしょんぼりと傍にいた。

病人が死んで野辺送りの時その猫は柩の後ろからついてきた。人が追い返すと猫は家に帰り、舌を食い切って死んでしまった。
貞享2(1685)年10月28日のことである。

 

[参考文献:新著聞集]

鼠の恩返し

寛文6(1666)年の頃、江戸の香具屋九郎左衛門の家で鼠が余りに増えたので、仕掛けをして鼠を捕え家来の者に「殺せ」と命じた。
しかし、家来は可哀想だと思い逃がしてやった。
その晩の事、夢の中に子供が一人出てきたと思ったら「夕方に命を助けていただきかたじけなく存じます。どうぞお酒をお一つ召しあがりなされ」と勧められ、金魚を肴として出したのを食べるところで目が覚めた。するとなにやら口の中に何かがある。
吐き出してみると金子一分である。それからというもの九郎左衛門の家では鼠を殺さなくなったという。

 

[参考文献:新著聞集]