子供

赤いクレヨン

ある夫婦が中古の一軒家を購入した。
ある日、妻が廊下に落ちている赤いクレヨンを見つけた。夫婦には子供がいなかったため、(前の住人の忘れ物かな)とごみ箱に捨てた。ところが、毎日毎日赤いクレヨンはそこに落ちていた。
夫婦は疑問に思いその辺りを調べると、そこには外から見るともう一つの部屋がある事を発見した。だが、中からはそこは壁であった。
そこの壁を叩くと周りとは違う音がする。そこで壁紙を剥がしてみるとそこには釘を打たれたもう一つの部屋があった。何とかしてそこをこじ開けてみた。するとそこにはびっしりと赤い文字で
「おとうさんおかあさんごめんなさいここからだしておとうさんおかあさんここからだしてごめんなさいごめんなさいおとうさんおかあさんここからだしてごめんなさいごめんなさいおとうさんおかあさんここからだしてごめんなさい…」

[参考文献:日本現代怪異事典]

 

鼠の恩返し

寛文6(1666)年の頃、江戸の香具屋九郎左衛門の家で鼠が余りに増えたので、仕掛けをして鼠を捕え家来の者に「殺せ」と命じた。
しかし、家来は可哀想だと思い逃がしてやった。
その晩の事、夢の中に子供が一人出てきたと思ったら「夕方に命を助けていただきかたじけなく存じます。どうぞお酒をお一つ召しあがりなされ」と勧められ、金魚を肴として出したのを食べるところで目が覚めた。するとなにやら口の中に何かがある。
吐き出してみると金子一分である。それからというもの九郎左衛門の家では鼠を殺さなくなったという。

 

[参考文献:新著聞集]

賭けをして我が子の首を斬られた事

 紀州のある里に侍が5~6人集まり、夜ばなし(※1)のついでに「この里から半里(2km)ばかり行った山際に祠があるだろう。その祠の前に川があるが、たまに死体が流れてくる。この際誰でもいいから、この川へ今から行って死人の指を切ってきた者には、刀をやるよ」と賭け事になったので、誰の行かないとは言う者がなかった。
その中に欲は深いが臆病者が「俺が行く」と引き受けて、自分の家へ一旦帰った。
そして女房に「自分は今、こんな賭けをしたのだけども胸がドキドキしてなかなか行けない」と言い出した。女房は「もう約束を変える事はできないんでしょ?私が行って指を切って帰ってくるから、あなたは家で留守番しておいて」と2つになる子供を背中に負い、その場所へ行った。
この川の前に森があってその祠の前に着き橋の下に降りてみたら、女の死骸があったので懐から脇差を出して指を2本切って懐に入れて森の間を抜けていたところ、上からしわがれた声で「足元を見てみろ、足元をみろ」と言う。怖ろしく思いながらも小さい包があった。取り上げてみたところ、重いもので「なるほど、これは仏神の自分を憐れんで、くれたきっと良いものだ」と思ってそのまま帰った。
男は女房が帰るのを待ち構えていて夜具を着て震えていたら、屋根の上から人2人ばかりの足音を鳴らして「お前は賭けをしたところへ行ってはないではないか」と言われる。それが誰かわからず恐ろしくて竦んでいた。
そこへ女房が帰ってきて男はてっきり化け物が中に入ろうとしていると目を回していた。女房は「私よ、どうしたの?」と言葉を聞いて男は喜んだ。
女房は懐から指を取り出して男に渡した。「嬉しい事があったのよ」と帰り際の包を男に言いながら開けてみれば、背中に負っていたはずの我が子の首があった。「これはどうしたことだ?!」と泣き叫んで急いで自分の子供を見ると遺骸となっていた。
女房はこの有り様を見て嘆き悲しんだが、もうどうしようもない。
けれども欲の深い男は、女房が取ってきた指を持って侍どもから刀を取ったとのことである。

※1 夜話、大体怪談話になる

[諸国百物語]