死人

通りがかりの人

ある女性が足を骨折した時の話。
ある日の昼にその女性は付き添いの看護師さんに車椅子を押してもらい、階下の売店へ行く途中だった。その時前から年配の知らない患者さんらしき女性が歩いてきた。
「こんにちは」
その患者さんは会釈してきたので、女性は挨拶を交わしすれ違った後、看護師さんが「振り返っちゃダメです」と女性に耳打ちした。
「今の人は今朝亡くなった人です」

屍の肉を食う僧

徳水院というところにある時、亡者を連れてきて沐浴、剃髪を依頼した。
僧が誤って死骸の頭を3センチばかりそいでしまった。この事を依頼主に見咎められるのも無念だと思い、自分の口の中に肉を入れて食べてしまった。
その味がとても美味しかったので、その味を忘れられず夜になると墓所に忍び入り、土を掘り返して葬った屍の肉を切り取って食う事が習慣となってしまった。
住職が墓所が荒らされている事を知り、一夜見張っていると予想していた狐や犬ではなく同宿の僧であったので興ざめしてしまった。ひそかにその僧を呼んでその事をたずねた。
僧は涙を流し「食べないよう心を抑えようとしてもどうにも耐えられず、このような事をしました」と懺悔した。
そしてこの僧は「人との交わりも断ちましょう」と言って暇乞いをして去っていったという。

死んで帰宅した男

寛政8(1769)年ある」旅芝居の役者が、千葉付近の海で仲間たちと酒盛りをしていた。するといつの間にか男がいない。仲間も海に落ちたかと思い探すが死体も上がらなかった。
とりあえずこの状態をこの男の女房に知らせなければと翌日の昼行った。
すると女房が「皆さん遅かったのですね、主人は今朝戻って2階で休んでいます」と言い、呼びに行ったところ女房の叫び声が聞こえた。
そこには人がいた調度品が散らかっていたが人はおらず女房は気を失っていた。
正気に戻った女房に聞いてみると「帰ってきてからそういえば『私が死んだら分相応の葬儀をしなさい、お前は再婚したらいい』と妙な事を言っていました」との事だった。