化け物に骨をぬかれし人の事

  京都の七条河原(古代は死体遺棄地であり、のちに庶民の墓地となった)に化け物が出ると言い伝えられていた。
若い男どもが、金を賭けて一人で夜中にその墓所へ行って紙を杭に打ち付けて帰ってこようとした。
その時、80歳ぐらいで白髪で顔は白くやつれていたが、背は2mほどあり眼は手のひらに一つあり、前歯二つをむき出してこの男を目がけて追いかけてくる。
男は、肝をぬかして近所の寺へ逃げ込み「助けて下さい」と僧に頼んだ。
僧は長持(※1)を開けその中へ男を入れた。そのうちその化け物が寺へ追いかけてきて、つくづくと見まわしその長持のところで犬の骨をかじって食べる音がしたけれども、僧もあまりの怖さに屈んで見ておられず、しばらくして化け物も帰ったことであろうとそれならばと長持を出して蓋を開ければ男は骨を抜かれ、皮だけになっていたという。

※1 衣類や調度などを入れる蓋のある長方形の箱。大体2.6mほど
[参考文献:諸国百物語]

吉利支丹宗門の者の幽霊の事

 伊勢の津(三重県津市)にキリシタンの信者がいた。江戸から「この者どもを逆さまに吊り、処刑してそのあと乙部(津市乙部)で火葬にした。
2~3日して日暮れ時に侍2~3人連れて古川(津市東古河町)という所を通ってみた。
すると、とても美しい女性で貴人の服を着て下女に袋を持たせて通るのを侍たちは「伊勢では見たことないなあ、どこから来たんだろうか」と不思議に思いつつ後をつけてみれば、この女性が先日の乙部の方へ行きあのキリシタンを埋めた穴へ行きひたすら骨を拾っていた。
また、連れの下女がどこからともなく2~3人出てきて同じように骨を拾いしばらくすると皆消え失せてしまった。

[参考文献:諸国百物語]