黒いスーツ、黒い車、サングラス。そして、感情の読めない表情。
UFOや宇宙人を目撃した人の前に現れ、「見たことを話すな」と警告して去っていく謎の男たち。彼らは一般に、MIB、つまりメン・イン・ブラックと呼ばれています。
1997年に公開された映画『メン・イン・ブラック』によって、MIBは世界的に知られる存在になりました。映画では、地球上に潜む宇宙人を監視する秘密組織としてコミカルに描かれています。
しかし、MIBという存在は、映画だけの創作ではありません。
もともとはUFO目撃談や陰謀論の世界で語られてきた都市伝説であり、目撃者に圧力をかける謎の人物たちとして、さまざまな証言に登場してきました。
では、MIBとはいったい何者なのでしょうか。
MIBとは何をする存在なのか
都市伝説で語られるMIBは、UFOや宇宙人を目撃した人、あるいはそれを調査している研究者の前に現れるとされています。
彼らは多くの場合、2人から3人組で現れます。服装は黒いスーツ。乗っている車も黒。サングラスをかけていることが多く、まるで映画のような姿で語られます。
ただし、実際の証言に出てくるMIBは、映画のように派手な銃撃戦をするわけではありません。
家や職場に突然現れ、目撃したものについて口外しないよう警告する。時には、政府機関や軍関係者、情報機関の人間を名乗る。場合によっては、脅迫めいた言葉を残して去っていく。
そうした話が、UFO目撃談の周辺で語られてきました。
不気味なのは、彼らが「なぜその情報を知っているのか」がわからない点です。
誰にも話していないはずの目撃内容を知っている。連絡先を教えていないのに家に来る。身元を尋ねても曖昧な答えしか返さない。
そうした要素が、MIBの都市伝説をより不気味なものにしています。
1947年、UFO都市伝説が動き出した年
MIBの話をたどると、1947年という年が重要になります。
1947年は、現代的なUFO伝説が一気に広まった年として知られています。この年には、UFO史に残る有名な出来事がいくつも語られました。
そのひとつが、ケネス・アーノルド事件です。
1947年6月24日、アメリカ・ワシントン州の上空を飛行していたケネス・アーノルドは、北から南へ高速で移動する奇妙な飛行物体を目撃したと語りました。
この証言をきっかけに、「フライングソーサー」、つまり空飛ぶ円盤という言葉が広まったとされています。
同じ年には、ニューメキシコ州ロズウェル付近でUFOが墜落し、米軍が回収したとされるロズウェル事件も語られるようになりました。
そして、MIBの原型としてよく名前が挙がるのが、モーリー島事件です。
モーリー島事件と黒いスーツの男
モーリー島事件は、ケネス・アーノルド事件の数日前に起きたとされるUFO目撃談です。
アメリカ・ワシントン州タコマ湾近くにあるモーリー島周辺で、ハロルド・ダールという男性が、息子と犬を乗せて船で航行していた時のことでした。
彼は空に、ドーナツ型の奇妙な物体が6機飛んでいるのを目撃したといいます。
そのうち1機は不安定に飛行しており、やがて降下してきました。すると、その物体から金属片のようなものが落ち、さらに溶岩のような物質が放出されたとされています。
ダールはその一部を持ち帰ったそうです。
翌朝、彼の家に黒いスーツの男が黒い車で現れました。
男はダールと朝食をとり、その席で、目撃したことを忘れるよう告げたとされています。
「家族を愛していて、今の幸せな生活を壊したくなければ、今回見たことはすべて忘れることだ」
このような内容の警告を受けたという話が、MIB伝説の初期例として語られているのです。
その後、ダールはケネス・アーノルドと接触し、UFO調査に関わったとされています。しかし最終的に、彼は「あの事件はなかった」と発言し、姿を消したとも言われています。
もちろん、この話の真偽には議論があります。
けれど、UFOを見た人物の前に黒い服の男が現れ、沈黙を求めるという構図は、その後のMIB都市伝説の定番となっていきました。
MIBの正体は政府機関なのか
MIBの正体については、いくつもの説があります。
もっとも現実的に語られるのは、政府機関や軍関係者、情報機関の人間ではないかという説です。
UFO目撃談の中には、軍事機密や試験飛行、極秘プロジェクトと関係していた可能性が指摘されるものもあります。もしそうであれば、目撃者に口止めをする人物が現れても不思議ではありません。
そのため、CIAやFBI、軍関係の組織、あるいは政府の謀略工作員ではないかという見方があります。
一方で、よりオカルト寄りの説もあります。
MIBそのものが宇宙人であるという説。人間に似せて作られた存在だという説。未来から来た監視者だという説。
こうした説が生まれる背景には、MIBの目撃談にしばしば出てくる奇妙な描写があります。
眉毛がない。表情が乏しい。目線が合わない。話し方が不自然。服装や車が時代遅れに見える。
こうした証言が、彼らをただの政府職員ではなく、もっと得体の知れない存在として印象づけているのです。
なぜMIBの都市伝説は消えないのか
MIBの話が人を惹きつける理由は、UFOそのものよりも「隠されている何かがある」という感覚にあります。
もしUFOの目撃だけなら、見間違いや錯覚、自然現象として片付けることもできます。
しかし、その後に謎の男たちが現れ、沈黙を求めてきたとなると、話は急に別の色を帯びます。
なぜ彼らは来たのか。
誰が彼らを差し向けたのか。
何を隠そうとしているのか。
MIBは、UFO都市伝説に「監視されている怖さ」を加える存在です。
空に現れた奇妙な光よりも、その後に家の前へ停まる黒い車のほうが怖い。そう感じる人もいるかもしれません。
黒ずくめの男たちは本当にいるのか
MIBが本当に存在するのかは、今もはっきりしていません。
目撃談の中には、後から作られた話や誇張された話も含まれているでしょう。映画や小説の影響で、証言のイメージが固定された可能性もあります。
それでも、UFOを見た人の前に「口止めする誰か」が現れるという話は、なぜか世界中で語られ続けています。
政府機関なのか。
軍の関係者なのか。
ただの都市伝説なのか。
それとも、人間ではない何かなのか。
真相はわかりません。
ただ、もしあなたが夜空に説明のつかないものを見てしまった時、その話を誰かにする前に、家の前へ黒い車が停まっていないかだけは確かめたくなるかもしれません。
